「地域のために」創設者の想い受け継ぎ70年。

自然災害と道路の復旧

2022年8月3日から5日にかけて、白山麓地区では白山市河内の観測所で降水量が398.0ミリ、白山市白峰で284.5ミリを記録する大雨となりました。 

8月の降水量平年値が224.4ミリですので、8月の1か月分以上の雨が一挙に降ったことになります。この雨の影響で、白山白川郷ホワイトロードでは崩落がありました。

参考情報▶気象速報・現地災害調査報告(金沢地方気象台) 「令和４年８月３日から５日にかけての 大雨に関する石川県気象速報 」

この道路の復旧現場で指揮を執っているのが、白山麓で建設業を営む『YAMAZAKIグループ』です。 

今回訪れた場所は山と山が重なる渓谷で、大雨の影響で山から流れる水流が工事を難航させ、2022年11月に関係者用の道がつながりました。 

2023年の白山白川郷ホワイトロードの営業からは一般車の通行も可能となりましたが、現在も復旧工事は続いています。 

白山麓活性化のために車道を整備 

『YAMAZAKIグループ』は1951年、現社長の祖父に当たる山﨑信一さんが、白山麓に噴出する岩間温泉の活用のために道路を整備したことに始まります。 

その後、1975年に『株式会社 山﨑組』を設立、1989年には生コンクリート部門を独立させる形で『山﨑商事株式会社』を設立させ、白山麓地域を中心に、道路、電気、水道などの公共の維持、災害時の復旧活動などを担ってきました。 

創業から70年以上、3代目となった今も変わらない思いがあると、現社長の山﨑貴文さんは言います。 

「それは『地域のために』という思いです。私たちは白山麓での暮らしを守り、活性化していくためにできることを常に考えています。

ここ数年で、白山麓でも雨の影響による災害が増えました。山では、道路が一つ通れなくなることは大打撃です。

2022年のホワイトロードの崩落では岐阜からの観光客が入ってくることができず、特に観光業に多大な影響を与えました。私たち山の建設業は、ここで暮らし働く皆さんの生活と商売を守る責任ある仕事なんです」。 

同社の主な業務は現場監督や施工管理です。 

提示される設計図を基に、予算、納期、安全性、品質を守りながら計画や管理をする仕事で、時にはトラブル対応や役所との折衝などのコミュニケーション力も必要となります。 

知識や経験が必要な仕事ですが、地域貢献でき、形や地図に残る仕事にやりがいを感じる社員も多いそうです。 

自然相手の建設現場は同じものが二つとない 

これは別の現場で、地滑りなど斜面が崩れるのを防ぐため、斜面に鉄筋を張り巡らし、モルタルを吹き付けています。 

街中での建設現場と違って、山は一つ一つ大きく現場が異なるのが特徴。 

現場監督の一人、安宅礼さんはそれを仕事の魅力の一つだと教えてくれました。 

「私は前職ではいわゆる街中の土木作業員をしていて、家の基礎となる地盤工事に携わってきました。毎回場所は変わるとはいえ、作業に違いはほとんどありません。一方で、『山﨑組』での仕事は毎回現場が全く違う。今日はリフトの撤去作業をしましたし、山の奥地で川の急流を抑える工事に携わったこともあります。毎回新たな気持ちで仕事に挑めるんです。 

また、住宅街ではご近所さんに配慮したり、周囲を気にしたりもありましたが、今は自然の中というダイナミックな現場。気持ちものびのびと働けている実感があります。職務的にパソコンや機器を使うことや書類を書くことも多いですし、打ち合わせへ行くこともあります。ですがそれもメリハリがあって面白いですよ」。 

社員の成長と健康を応援する会社 

安宅さんは同じ建設業界からの転身でしたが、自然の現場や現場監督として業務にあたるのは未経験。 

その成長を支えてくれたのは会社の教育環境でした。 

「資格取得を応援してくれ、試験を受けるのに必要な交通費や宿泊費の補助もありがたかったです。手に職を付けられ、自信にもつながりました。また、会社の雰囲気も良く、社長とも他の社員とも話しやすい。何かあれば相談できる環境だと思います」と安宅さん。 

対する管理職としての社員への思いを山﨑さんが語ってくれました。 

「『YAMAZAKIグループ』は、経済産業省が顕彰する健康経営優良法人に2020年から選ばれています。

私は親を早くに亡くしたこともあり、看病での大変さや健康の大切さを身に染みて理解していました。そこで、社員の健康づくりを推進し、人間ドックや歯科治療、禁煙外来などの医療費助成、インフルエンザの無料予防接種、スポーツジムの法人契約、スポーツイベントの参加や開催などを行っています。 

また、働く環境として社員寮を完備し、移住も積極的に受け入れたいと考えています。休日は年間123日ありますので、白山麓のアクティビティも楽しんでいただきたいですね」。 

同グループではホームページやポロシャツのデザイン、社員寮の内装、会社の外装なども洗練されています。 

これらも社員の働く環境を魅力的にしたいという社長の思いがあるのだといい、従業員の士気向上にもつながっているようです。 

白山麓地域のための観光資源の創出 

「地域のためにできることを」と、同グループが一里野にキャンプ場を立ち上げました。 

かつてスキーブームで栄えた一里野をキャンプの聖地にして盛り上げていこうという思いが込められています。 

2023年7月にオープンしたこのキャンプ場の名前は「HITOYAMA ICHIRINO OUTDOOR」。 

スキー場の中腹にあり、空が開けていて、夜には星もよく見えるそうです。 

キャンプでの不便さを補うように、管理棟ではシャワーや洗面、トイレなどが完備され、室内の焚火スペースでは利用者同士のコミュニケーションもできます。 

「かつて、一里野スキー場はファミリー層を中心に賑わっていました。幼い頃に両親に連れられて一里野に来ていた層が親や祖父母となり、今度は子や孫を連れてキャンプに来る。

昔、スキー場を求心力にレンタル品を扱う店や食事処ができたように、今後、キャンプ用品店や他のキャンプエリアができて、キャンプと言えば白山麓という流れになっていければと思っているんです。

音楽イベントの開催などにつなげてもいいかもしれません。『HITOYAMA』はその第一号です」と山﨑さん。 

インフラ整備で白山麓の生活や観光産業を守り、発展に貢献してきた『YAMAZAKIグループ』。 

建設業としてだけでなく、地域全体を盛り上げようと、キャンプ地･一里野へ向けた仕掛けを始めました。 

この仕掛けがどう相乗効果を生んでいくのか、そして地域貢献度が高い同グループの今後の取り組みからも目が離せません。