白峰の食文化である「とち餅」を守り続ける

志んさ本舗和菓子店

はたらく

SANTOHJIN

地域に根差して65年

 

 

霊峰白山のお膝元にある白山市白峰地区。地区の半分が白山国立公園となっており、日本屈指の豪雪地帯でもあります。昔からの独特の建築様式が残り、平成24年(2012年)には「重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)」に選定。江戸から明治時代に建てられた趣ある民家が軒を連ねており、山間地とは思えない町場のような雰囲気が漂うことから、多くの人が訪れる人気の観光スポットになっています。

 

 

この地で昭和36年(1961年)から創業している和菓子店「志んさ本舗」は、名物「とち餅」で知られる有名店。「とち餅」は粒あんをとち餅で包んだ大福タイプと、とち餅のまわりに粒あんを塗ったタイプ、それから切り餅(あんこが付いていない)の3種類があり、どれも栃の実の風味を感じられる素朴な味わいです。

 

連日「とち餅」を求めて多くの観光客が訪れますが、地元の人たちにとっても欠かせない存在。ご近所さんへの手土産だけでなくお盆やお正月、お祭りといった晴れの日にも重宝されているほか、二代目・織田毅さんが手掛ける地元産の栃蜜を使ったカステラや栃の実入りのシュークリームといった、白峰ならではのオリジナル洋菓子も評判です。

 

 

今では観光土産として有名な「とち餅」ですが、織田さんによると「親父が創業した当初はお店で買って食べるものではなく、各家庭で作られるのが普通だった」とのこと。白峰は周囲を山々に囲まれているため稲作はほとんど行われておらず、米は貴重な食糧。「それこそ昔は、行事のときだけ食べるものだったと聞いています」と教えてくれました。

 

苦味や渋みなど、アク成分が多く含まれている栃の実。おいしく味わうためには丁寧なアク抜きが欠かせません。近年では栃の実を粉末状にしたものも商品化されているそうですが、織田さんは自ら地元の山で栃の実を収穫し、手間ひまをかけて加工しています。皮剥きをしてから餅になるまで、実に10日間。顔の見える生産者から仕入れた餅米と共に搗(つ)いて、ようやく完成です。

 

自然から食べ物をいただいている

 

 

平日なら1日300個、多い日には1500個が売れるというとち餅。現在は本店のほか、「道の駅 一向一揆の里」(白山市出合町)、「道の駅 瀬女」(白山市瀬戸・4〜11月の雪のない時期に営業、木曜のみ販売)で取り扱いがあります。

 

北海道産小豆を使ったつぶあんは、甘さ控えめでやさしい味わい。その理由について織田さんは「とち餅自体が素朴な味なので、それを邪魔しないように、つぶあんにして田舎らしさを演出しています。また、とちの実の風味を引き立たせるために、あんこの主張を控えるのもこだわりです」と語ります。

 

 

地元出身の織田さんは専門学校を卒業後、大阪の洋菓子店で9年間ほど働きUターン。15年前に代替わりしました。小学生の頃から栃の実の加工をしたり、家のお手伝いをしてお小遣いをもらっていた織田さん。家業を継いだのは、自然な流れだったそうです。「個人店は他にはないオリジナル商品を作らないと生き残れないと言われているなかで、うちの店には『とち餅』があることに気付きました。当時はメジャーなものではなかったですし、残していかんなんと思いましたね」と振り返ります。

 

「洋菓子店に勤めていた頃は、材料は注文して届けてもらうものでした。それがこの仕事を始めてから、材料を山まで行って自分で採ってくるようになった。これまで当たり前だと思っていたものが当たり前じゃなかったと気付き、食べ物を自然から『いただいている』という意識が芽生えましたね」と話します。

 

先人の知恵に学びながら

 

 

「もともと、こんな平和すぎる村、はやく出て行きたいと思っていたんですよ」。子どもの頃は遊ぶ場所が少ない地元をつまらないと思ったこともあったそうですが、一度故郷を離れて戻ってくると、白峰の良さに目がいくようになりました。

 

「自然が豊かで、歴史や文化もある。特に先人たちの自然と共存する知恵は素晴らしく、山や森の資源を守るためにどうしたら良いかを知っているんです。栃の実もそうですが、自分たちが採り尽くしてしまったら無くなってしまう。山菜を採るにしても野菜を育てるにしても、来年以降のことを考えながら行動しているんです」。

 

 

「とち餅は、単なる商品ではなく白峰を代表する食文化だと思っています」。2023年5月に白山手取川ジオパークがユネスコ世界ジオパークに認定された際、店を訪れた事務局員に「栃の木が群生しており、それを地元で使っているなんてすごいですね」と励ましの言葉をもらい、とち餅を守っていく思いを強くしたそうです。

 

 

現在「志んさ本舗」では織田さんとパートナー、パートさんの三人が働いています。業務内容はとち餅の製造や栃の実の皮剥き作業をはじめ、春にはよもぎを摘みにいったり、秋には栃の実を採りにいったりと自然と触れ合う機会が多数あります。

 

「遠足気分で白山国立公園まで行くこともありますよ」と言い、「和菓子について詳しく知らなくても大丈夫、自然が好きな人と一緒に働きたいですね」と織田さん。白山の食文化を守り、自然と共に生きる。そんな働き方をしてみたい人は、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

求人詳細

和菓子店

志んさ本舗

住所
〒920-2501 石川県白山市白峰166-3
電話番号
076-259-2030
募集職種
店の業務全般
雇用形態
アルバイト
給与
面談にて
勤務地
石川県白山市白峰ロ166-3
勤務時間
午前8時~12時 (イベント時等は昼からも16時頃まで)
休日休暇
定休日(火曜)その他シフト制
求める人物像
自然の好きな人
問い合わせ先
代表:織田毅まで(076-259-2030)

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