趣味を仕事に大人の男の社交場

県内唯一のラジコンオフロードサーキット

突然ですが、ラジコンをしたことはありますか？　中には80年代のラジコンブームの際にハマった人もいるかもしれません。今なお多くの人を惹き付けるラジコンを、マニアだけでなく初心者も楽しめるスポットが2023年春にオープンしました。

「HOBBY 502（ホビー 502）」は石川県唯一のラジコンオフロードサーキット。豊かな自然に囲まれた白山市河内町にあり、抜群の開放感のなか自由にラジコンを走らせて楽しむことができます。

オーナーの米倉浩二さんは石川県金沢市出身。高校を卒業後、国産車のディーラーへ入社し、整備や営業などを経験しました。「30年以上サラリーマンとしてずっと同じ会社で働いていたので、一念発起してこれまでとは全く違うことに挑戦してみたいと思いました」と話す米倉さんが選んだのは、高校生の頃に兄の影響で始めたラジコンでした。

高校時代にラジコンの全日本選手権出場歴もあり、プライベートでは車を運転するのが好きという米倉さん。起業に向けて情報収集するなかで、石川県内ではラジコンを楽しめる場所が少ないことを知り、ラジコンオフロードサーキットの開設を決めました。

プライベートでは長女が小学生になる歳に合わせ白山市に移住。起業にあたり敷地を探すなかで見つけたのは、もともと幼稚園があったという場所でした。「金沢市からのアクセスが良く、騒音でご迷惑をかけることもない。見つけたときに『ここや！』って思いました」と振り返ります。

DIYでショップやサーキットを制作

物件が見つかってから約二ヶ月間、友人に手伝ってもらいながら手作りでショップやデッキを完成させました。「店づくりは楽しかったですね」。米倉さんの笑顔からは達成感が滲みます。

サーキットはオフロードバギーやラリー車、ビックタイヤ系まで様々な電動ラジコンが走行でき、持ち込んだラジコンはもちろん、手ぶらで訪れてラジコンをレンタルすることも可能です。店内では各種ラジコンやパーツも販売しており、お客さまからパーツ交換やメンテナンスについて相談を受けることもあるのだとか。

「お客さまの要望に耳を傾けなから日々進化しています」と言い、サーキットのジャンプ台はお客さまのアイディアで設置したほか、定期的に開催しているレースの種類も増やしました。「ラジコンは楽しみ方がいろいろあります。作るのが好きな人、走らせるのが好きな人、レースが好きな人、コレクターなどさまざま。それぞれの楽しみ方ができるような場所にしたいです」と米倉さんは話します。

昔からラジコンが趣味という人もいれば、「HOBBY 502」がオープンしたことがきっかけで通うようになった人もいます。また、昔の友人や会社の同僚を誘って来る人も。「コアな趣味なので、情報共有をする人が多いんです。ここがきっかけで知り合いになったり、昔の知人や友人と久しぶりに遊ぶ機会になったりする人もいるようです」とのこと。開業1年で多くの人に親しまれ、また大人の社交場のような存在になっていることが窺えます。

取材当日、サーキットで自前のラジコンを走らせていた男性は「もともとラジコンが好きで持っていたのですが、走らせる機会がありませんでした。ここがオープンしてから、もう4回ほど訪れています。米倉さんは穏やかな人柄で他のお客さんからも親しまれていますよ。客同士の交流もあって、コミュニケーションが自然に生まれる楽しい場所です」と教えてくれました。

小学生からリタイア世代までが一緒に楽しめる

「HOBBY 502」では月1回レースを開催しており、コミカル系やスピード系など車の種類ごとに参加できるスタイルとなっています。「このあいだ参加した小学生は、レースに勝てなくて泣いていました」と米倉さん。小学生からリタイア世代まで幅広い年代の人が、肩を並べてレースをできることも、ラジコンの魅力の一つです。

訪れるたびにサーキットでラジコンを走らせるお客さまの姿が見える、「HOBBY 502」。集客や宣伝についてどのようにしたのか訊ねると、「僕はSNSは得意じゃなくて」と一言。聞けば、ここを訪れたお客さまが自発的にSNSで発信したり、レースの度に動画を撮影・編集してYouTubeにアップしてくれる人がおり、それらを見た人が訪れるという流れができているのだそう。

「もちろん私がお客さまにアドバイスをすることもありますが、逆にベテランのお客さんから教わることもあります。この世界にハマっている人は、本当に何でも知っているんです」と米倉さん。お客さまの声に丁寧に耳を傾けたり、教わったりしようとする研究熱心な姿勢に、応援したくなる人がいるのも頷けます。

2024年秋には、第2サーキットとして手のひらサイズの「ミニッツ」専用屋内サーキットをオープン。会場となるのはなんと、長く使われていなかったプールだった場所です。全国的にも珍しいプールを活用した屋内サーキットに期待の声は多く、「オープン前にSNSで公表したところ、たくさんの反響をいただきました」と嬉しそうな表情を見せていました。

「最近は趣味も多様化していて、スマートフォンの登場により、一人で趣味を楽しむ人も多くなりました。お客さまとのやりとりで印象に残っているのは、『この場所があって趣味仲間ができた』という一言です。かつての友人や家族でここを訪れて、一緒にラジコンを走らせて楽しむ、趣味を共有できるような場所になれればと思います」と語ります。